「実際のお話ですが物語風に」
物語3話 住環境整備の実態と現場
介護のためのリフォームというと、皆さんが考えるのは対象者の現在の能力と住まいの問題点を改修によって調和させる建築的(物理的)なものだろうと思います。しかし現実には、物理的な側面だけでは解決出来ない環境があり、その環境への対応が巧くいかなければ改修そのものが無意味なものになってしまいます。
一つには、家族環境(介護力・人間関係)であり、一つには対象者の人生観です。
物語1. 何故なんでしょう。? ベッドサイドでの排泄であればご主人は自立して行えますが、トイレへは奥様の介助が必要でした。 |
物語2. 手すりの付け直しを行ったお宅の話です。設備屋さんに手すりを付けてもらったが母親が浴槽に転落してしまった。一度見て、アドバイスして欲しいとのケアマネさんからの連絡がありました。現場を見せて頂きましたが何ら問題なく、きちんと手すりは設置されていました。 当事者である、軽度の認知症をお持ちのおばあちゃんにお話を聞きました。おばあちゃんは「私が悪い、 〃 」の繰り返しです。それで、浴室でどうやって転落したのか再現してもらうことになりました。なんと、おばあちゃんは、ほとんど手すりに手を掛けません。設備屋さんは浴槽縁に腰掛けて入槽する手順で手すりを付けていました。しかし、ご本人は、立ったまま窓台に手を掛けて入槽していたのです。当事者であるおばあちゃんの入槽の手順を確認しなかったことが原因でした。メーカーのカタログに沿った改修を行う業者は、カタログ通りの施工しか出来ません。永年それぞれの生き方で生きてきた方々にはそれぞれの習慣があります。カタログは平均的な習慣、もしくはカタログ制作者の思いこみで書かれているかも知れません。 |
物語3. 転倒の危険もあって、ご家族としては、昼間はトイレを使用して夜間はポータブルトイレを使用するプランを希望していました。しかしご本人は、夜は這ってでもトイレに行く、ポータブルトイレはいやだと聞き入れてくれません。ケアマネが懸命に説得してようやく導入が決まりました。数日後お嫁さんからSOSが発信されました。 何故なんでしょう。? このお母さんは、嫁に自分の排泄の後始末をしてもらうの事を非常に気に病んでいたのです。いわゆる「下の世話にはならん」と言うことです。それで、かたくなに導入を拒んでいたのです。ケアマネの説得攻勢に、やむなく了承したものの納得はして居らず、後始末は自分ですると決めていたようです。しかし、中身の入った内容器をトイレまで持っていって廃棄出来る方であれば、元々ポータブルトイレは必要ありません。この事例のポイントは、説得した結果は必ずしもその通りにはならない。納得して初めて使ってもらえるという反省事例です。 |
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